この本、よい子のための・・・とありますが、中身は結構高度です。
その上、著者が確信犯なのか後半 放課後編、補習編はフィクションありーの、
対談ありのーで、最初から読み進めていくと???という気持ちになりました。
最も参考になったのが、前半の講義編で、世界の写真の潮流がよくわかりました。
「決定的瞬間」のブレッソンの時代、次にエグルストンに代表される
”決定的瞬間ならずとも世の中は写真で撮影されるに足る不思議にあふれている”
と考えるニューカラーの時代。
そして今はポスト・モダニズム世代で様々な実験的手法が取り入れられ
若干混乱中ということなんですね。
登場する写真家の名前なんてブレッソンとアラーキーくらいしか知らなかったので
最初に講義編を読んだときはついていけず苦労しました。
だいたい、著者のホンマタカシ氏ですら、この本を買うまで知りませんでしたから。
でも、2度目に読んだときはなんとなく写真史の潮流がつかめました。
ボクはカメラを持って街をうろつき、気になったものを切り取ることに
生きがいを感じていますが、それって写真史的にはもう2世代前のマインド
なんだとわかり、ちょっぴり涙。
それよりもむしろ、自分の身近なモノを丁寧に切り取ったり、あえて不便な
カメラ(クラッシック、針穴etc...)を使って自らに制約を課しながら撮影して
いく手法の方がポスト・モダニズムなんですね。
フォトギャラリー、特にマイナーどころの自主ギャラリーでは7割くらい、
ボクにとって、なんのことやらわからない写真が展示してあります。
以前、写真美術館でやっていた写真新世紀展もわけのわからん写真ばかりでした。
おそらく様々な実験的手法や写真の可能性を模索しているのでしょう。
ピカソの絵をなんの知識もなく見たら、なんのことやらわからない絵に見えると
思いますが、写真観賞も前提知識があったほうが楽しめると思います。
この本を読んでなんのことやらわからない写真展が半分くらいに減ればうれしいな、、
と思いました。