2000年10月16日(月)読了
最近、日本という国がうっとおしくてしかたない。風通しが悪いというか、お先真っ暗というか。景気が悪いことがもっとも大きな原因なんだけど、それを克服するための抜本的な改革を政府なり、企業なりがとれない。例えば日本の通信費用の高さがIT革命を進行を妨げているのは明白なのにそれを是正することができない。
日本という社会システムに明らかに欠陥があるのにそれを自浄することができない原因のひとつとして「既得権」があるんじゃないかと思い、東京出張の往復の新幹線の中で読んだ。この本を読むと日本の将来について暗澹たる気分になる。過去20年にわたり「既得権」が様々な改革を妨害している。国鉄改革、NTT解体、郵政事業解体、特殊法人改革、金融改革、橋本行革など、様々な改革が行われたが、国鉄改革以外はことごとく失敗し、形だけの改革に終わっている。既得権を守ろうとする政・官・民のパワーおそるべし。
既得権からはずれてしまうが、日本民族の特性としてなんらかのショックが与えられ、既存の権力が力をなくすと、優秀な人材があらわれ、あっというまに世界の先端を行く国をつくりあげてしまう。戦前なら明治維新から日露戦争の期間もそうだ。「坂の上の雲」なんかを読むと当時の政治家・軍人たちがいかに創意工夫をして国力を高めていったかがわかる。しかし、いったん、国家が形をなし列強の仲間入りをすると、創意工夫は失われてしまい。先人たちの残したプロセスを盲目的に守るだけで、周囲の状況に柔軟に対応することができなくなる。そして敗戦だ。戦後も、焼け跡の中から雨後のたけのこのように実業家がにょきにょきと頭角をあらわし、ソニーやホンダといった巨大企業をつくりあげていった。そして30年経たずして先進国の仲間入りを果たした。しかし、その後はバブル崩壊で、太平洋戦争時に匹敵する国富喪失が生じてしまう。いったん金の出所をつかむと、それを「既得権」として絶対手放さない。これが次の世代への変革を阻んでいるんじゃないかと思う。