サブタイトルに
「平塚八兵衛の昭和事件史」とあります。
平塚八兵衛は警視庁捜査一課所属で、昭和の大事件解決にことごとく関わってきた名刑事です。退職後、産経新聞が昭和の大事件をインタビューとしてまとめたものです。
2つの点でめちゃめちゃおもしろいですよ。
ひとつは、松本清張が小説やドキュメンタリーとして書いている事件を平塚刑事が実際に捜査していることで、ひとつの事件に対する見方がこんなにも違うものかと驚かされます。
帝銀事件で清張は、特務機関・GHQが絡んだ犯行であり、平沢死刑囚は冤罪だと主張し、実際に平沢容疑者の地どりをおこない、逮捕した平塚刑事は、「平沢に間違いない」と断言していますし、下山事件で清張はGHQ・CISによる他殺説を主張し、平塚は自殺説を支持しています。
清張と平塚の意見が一致するのは「黒い福音」のスチュワーデス殺人事件だけです。清張と平塚は知り合いだったらしく、この本に松本清張が取材に来た旨が書かれているし、「黒い福音」に平塚刑事らしき名物刑事を登場させています。
下山事件にしろ、帝銀事件にしろ、どちらの意見も説得力があってどちらが正しいとは言えません。事件の関係者も、清張も平塚刑事も亡くなった今、真実は永遠になぞなんじゃないでしょうか。
ふたつめは、この時代の刑事の人間像が赤裸々に書かれていて、とってもおもしろいです。ホシをあげるために、上司にけんかを売り、捜査を続けるために家を抵当に入れ、話を聞いてくれない参考人の自転車を壊して、自転車屋で待ち伏せしたりします。はちゃめちゃだが、ホシをあげるためならなんでもするという職人気質の刑事像は、なんだかとっても「熱い」ものを感じます。
下手な推理小説よりずっとおもしろいです。