昭和34年の「スチュワーデス殺人事件」をベースに清張が創作したもの。
警察が、ベルギー人神父を捜査線上にあげていたが、宗教問題化、国際問題化をおそれて、捜査の二の足を踏んだ結果、容疑者の出国という事実上の敗北を喫してしまった事件です。
社会性の強い小説なのかなと思って読み始めると、前半は牧歌的な恋愛小説みたいな感じで少々拍子抜けしちゃいました。後半に入ってくると、清張の2つの怒りがストーリーに色濃くにじみでて、社会派文学の面目躍如といったところです。
ひとつは日本という国の立場の弱さに対する怒りです。外国人容疑者があがった時点で、警察は腫れ物に触るような態度をとります。清張はこういう日本のありかたに義憤を感じていたように思えます。
もうひとつは宗教集団の閉鎖的権威主義のカベと、それに屈してしまう警察・マスコミの弱さです。
「スチュワーデス殺人事件」から約50年、今は昭和34年と比べるとどうなんでしょう。
昭和34年ほどひどくないにせよ、日本が国際貢献と釣り合いがとれるほど自己主張しているとは思えないです。
宗教にいたっては、オウムの跳梁跋扈を許したあたり、もっと酷くなっているような気がします。
この本を読み終えたとき、「結局、あんまり変わっていないんじゃないかなぁ」と思い、少々複雑な気分になりました。