モレスキンノートに万年筆で書くと裏抜けする問題を調べているうちにいろいろ面白いことがわかりました。
クリスマスイブには全くふさわしくない問題なのですが(笑)
万年筆のインクの問題はインクジェットのインクと問題と比較すると面白いのです。
ボクは写真をやるので、インクジェットプリンターの染料インクと顔料インクの問題には結構詳しいのです。
まず、染料インクと顔料インクの性質の違いなのですが、水彩絵具と油絵具に比較するとわかりやすいです。
水彩絵具は染料を紙に染み込ませて彩色しますが、油絵具は顔料を紙に塗る、もしくは紙に盛る形で色を表現します。
その特色がインクジェットプリンターの染料と顔料の違いにそのままあらわれます。
水彩画は鮮やかで派手な表現が可能ですが、にじみが生じやすく水、光に弱く、同じように染料プリンターの印刷物は派手で鮮やかな表現が可能ですが、耐水、耐光性に弱いのです。顔料プリンターはナチュラルな表現が得意ですが、彩度の高い今風な表現が苦手で、耐水、耐光性が高いのです。
インクジェットプリンターの世界では双方ともメリ・デメがあるので、どちらが優れているかでなくあくまで利用者の好みで選択されます。
ところが万年筆の世界ではユーザーの選択肢は長い間、染料インクしかありませんでした。
なぜなら、インクのフローコントロールを自然の力(重力とか表面張力など)でしかおこなえないからです。サラサラして水に溶ける染料インクと異なり、顔料インクは水に溶けないため、万年筆のメカニズムの中で目詰まりが発生しやすいのです。このため万年筆に顔料インクを使う人々はごく一部のマニアに限られていました。
インクジェットプリンターでは印刷前にノズルに熱を加える、圧力をかけるなどのメンテナンス機構を組み込むことで目詰まり問題を解決しています。
しかし万年筆用顔料インクは顔料インクジェットプリンターによる印刷物同様、耐久性が高く、いつまでも色あせない性質があるため、主に公文書を扱う人々からのニーズはとても高かったのです。
万年筆の世界で顔料インク問題が解決したのはほんのここ数年で、メーカーによって解決のアプローチが違うのが面白いのです。
まずプラチナ万年筆は万年筆本体に独自の密閉構造を組み込みインクの乾燥を防止することを可能にしました。それまでは顔料インクをいれた万年筆は、乾燥を防ぐため毎日使う人でないと向かないと言われていたのに、この構造により一年間放置した顔料インクを充填した万年筆もふつうに使うことが可能になりました。
一方、セーラー万年筆はインクの構造を変えることで問題を解決しました。顔料の粒子は染料と比べて巨大で染料の100倍の大きさがあると言われ、その大きさが目詰まり問題の一因となっていました。そのため、顔料インクの粒子を極限まで小さくすることで染料インクを前提に作られた普通の万年筆で顔料インクを使えるようにしました。
だいぶ話が長くなってしまったのですが、紙に必要以上に浸透しない顔料インクが使えればモレスキンに万年筆を使っても裏抜けしないのではないかと思っています。
さしあたり、万年筆を買う金はないので(笑)、いつかは試してみようと思っています。